債務免除と事実上の債務免除
債務者である金融機関が債務者あて債権を棒引きにすることについて
*①債務免除
*②事実上の債務免除
との二つがあります。
*①債務免除→金融機関が債務者あての債権を償却して、債務者に対して債務免除を行うことであり、これは、法的整理のケース以外は、相当困難です。
債権償却にあたり、
債務者が実質的に破綻状態である場合等を除き、銀行の会計上は損失処理がみとめられますが、税務上は損金として認められないので、「有税償却」とせざるを得ないケースが多く、銀行としては、償却の損失負担+税負担が発生します。また、銀行が債権償却・債務免除を行ったことについて、銀行の株主に対して説明責任が発生してしまいます。
銀行が、債務免除による有税認定の寄付金認定を回避して、貸倒損失として無税償却を進める可能性があるケースとして、
*中小企業再生協議会の支援を受ける場合
*PCC(整理回収機構)の支援を受ける場合
*私的整理ガイドラインに基く支援を受ける場合
等があります。
しかし、メインバンクからの申し入れ、債務者企業の特性(業種・規模・従業員数・他)
費用・経営責任の明確化、等の課題により、特に、零細的な企業の場合には、かなり、ハードルが高いものであります。
②事実上の債務免除
銀行が直接債務者あてに債務免除をする以外の方法として「事実上の債務免除」の方法があります。
債権譲渡
銀行は、債権をサービサーに売却するケースがまずあります。
銀行が、債権をサービサーに売却した場合は、損失部分は無税償却できます。
この場合、銀行は、サービサーに債務の延滞債権の額面ではなくて、時価で売却します。
時価とは債務者の返済能力を加味した数値であり、例えば額面の2~5%程度の相当低い金額の場合が多いようです。
債務者側から考えますと、サービサーとの交渉で額面を大きく下回る金額(サービサーが利ざやを取れる金額)で、一時金の支払にて残債務は債務免除の可能性がうまれてくるものであります。
信用保証協会への返済の継続→保証協会保証付融資は、延滞が続くと代位弁済にて債権が保証協会に移ります。
債権者が銀行から保証協会に変わるわけです。
保証協会も、債務者に定期的に面談を求めてきますが、その際、債務者が資金繰り状況の資料を提示して、払える範囲の少額の金額を毎月返済します、といったら、保証協会が、「それでは何百年かかると思ってているのですか?」、というかと言えば、そうではありません。債務者の生活権があるからです。→保証協会には、可能な限りの返済で良いのです。→ほとんど実質的に債務免除と同じと思われます。
なお、一応保証協会にもサービサーはありますが、同じ組織内です。
さらに、保証債務の場合は、保証協会は債務の免除を認めるケースも多数事例的にあり、2000万円の保証債務が100万円だけ保証協会に支払えば残りの保証債務は免除にして頂ける等のケースもあるとの事です。
任意売却をして、債務をある程度返済して誠意を見せれば、金融機関との交渉で無担保債務となった残債務をサービサーに売却してもらい、一時金の支払等で債務を実質的に免じにしてもらえるケースもあるのです。